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一方、修繕については、海洋土木事業者の基本的スタンスとして道内修繕を志向していることが分かった。しかし、技術面あるいはサービスの面などで、海洋土木事業者が指摘するニーズや要望も多いため、道内造船業としてもさらなる改善余地がある。
本調査研究においては、道外への新造発注による流出著しい起重機船をターゲットとして選定し、起重機船の道内新造シェアを今後高めるために関する議論を中心に進めることとする。
2−2−2 作業船市場における現状と問題点
道内作業船関連業者からのヒアリングに基づく、主として定性的情報からの現状把握と道内造船業者にとっての、作業船分野参入にかかる克服すべき課題を抽出した。
海洋土木事業者からのヒアリングでは、主として道内造船業に対する技術面、価格面、納期面、営業面等の評価についての聴取から、道内造船業は作業船建造実績に乏しいため発注には不安を感じる点などの問題や、地理的条件にも起因する北海道ならではの作業船分野参入にかかる阻害要因(特に価格面や納期面)が存在していると考えている。
それに対し、造船業者側のサイドからは、海洋土木事業者との作業船市場に対する技術や価格面での認識のギャップが存在する点や、作業船に本格的に参入することに対する不安の存在などがある。
一方で、作業船建造シェアの高い瀬戸内地域の造船業者にもヒアリング調査を試みた結果、そこで明らかになったのは、コストダウンの徹底、協力工場ネットワークの存在など、極めてシビアな経済原理に基づく工業生産が貫徹されている姿であった。
こうした状況を総合的に分析した結果、道内造船業にとっての作業船分野参入にかかる克服すべき課題として抽出されたのは、まず、作業船市場に関する正確な現状認識を行い、その上で変化の激しい外部環境に適応するための戦略を立案する必要がある点である。また、当然のことながら、生産能力(品質・原価・工期)の向上を進める取り組みと、同時に営業活動の強化と顧客(海洋土木事業者)との認識ギャップの解消を図るための早急な対応も重要な点として指摘できる。そして、漁船造修に特化してきた道内造船業にとっては、今後の漁船造修需要の減少傾向を目の当たりにし、新たな売上の柱となる、作業船分野への参入による業界の構造的間題への対応を図ることが重要課題である点を認識するに至った。
2−2−3造船業の今後の経営方針
以上までの分析を受け、作業船分野に参入するに当たっての経営方針の立案を行っている。
まず、道内中小造船業者が今後取り組むべきターゲット船は、100〜150トン吊り能力級の起重機船であり、かつ更新時期に際しての代替需要を狙い目とするべきである。その根拠として、道内には水深の浅い漁港工事などが多く、100〜150トン吊りクラスの中型作業船のニーズが今後も高い点と、それに加えてこのクラスの起重機船はまだ中古市場に多く流通していないという背景があるためである。また、公共工事の事業規模横這化と先行き不透明感の高まりによる海洋土木事業者の新たな投資意欲の停滞感が根強く存在し、今後の建造についてはスクラップ&ビルドが中心となる点があげられる。なお、このクラスの道内における代替建造需要は、今後3年程度以内に約3,200〜10,400DWT存在しているものと推測される。
また、中長期的に目指すべきターゲット船は、公共工事の大型化などを背景に、近年、道内

 

 

 

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